MysteryRanchにおけるMultiCamウェビング
MultiCamのウェビング(テープ)についておもしろいコメントを頂きましたので、ちょっとだけ掘り下げてみたいと思います。
きっかけは、Kaitaiyaさんから頂いたコメントから。
BLACKJACK 50 - MYSTERY RANCH Maniac
はじめまして、(中略)当方は少し前のテープがジャガード織マルチカムテープになった直後のパックを数年使用してきたのですが、普通はこういったテープ類の素材は「ナイロン」が使われているのが普通のはずですが、このジャガード織マルチカムテープだけは素材が「ポリエステル」だったようで、使用中にこのテープ類の痛みや劣化だけ、早かったのです。よって、最近までハンティングシリーズにラインナップされていた「マルチカムモデル」はジャガード織でない、恐らくナイロン仕様のものが採用されていたようなんですが、それも無くなってしまったんですが、そこに新たに、Spear やBlack Jackといった、また新たに「ジャガード織マルチカムテープ」を採用したモデルが出てきたものですから、果たして、このマルチカムのテープの素材は何なんだろう・・・という事に、非常に興味があるのですね。もし、情報をお持ちでしたら、是非教えて頂けるとありがたいです。よろしくお願い致します。
コメントありがとうございます、、。
こういったファブリックに関する事は個人的に非常に興味深い点です。
Jacquard Woven VS Printed
MultiCamに限らずカモ界隈では常識なのかもしれませんが、迷彩柄ウェビングには、ジャガード織とプリントの二種類があります。
写真では分かりにくいですが、両者の違いとしてはジャガード織タイプが一本一本の糸の色でパターンを再現しているのに対し、プリントタイプは白い無地のウェビングに印刷するかたちでパターンを再現しています。そのため、プリントタイプではウェビングの端に生地の白色が見えるのが特徴で、表だけプリントしたものと両面にプリントを施した2タイプが存在します。
MultiCamの権利を有するCrye Precision社のサイトによれば、ジャガード織タイプのものをMurdock Webbing Co.が、プリントタイプをMMI TextilesとTexcel Inc.がそれぞれ製造のライセンスを受けているようです。ただ、過去ライセンスを受けていた企業が他にある可能性には注意が必要です。
素材についてはMMI TextilesのプリントタイプはINVISTA社のCORDURAを使用していると紹介されており、Texcel Inc.は不明ながらいずれもA-A-55301(旧MIL-W-43668)あるいはMil-W-17337に準拠したナイロン製であると考えられます。
※MMI Textilesのプリントウェビングは側面の白い生地色を抑える加工が為されており、現在は容易に区別可能なようです。
問題はMurdock Webbing Co.のジャガード織タイプのものです。公式サイトには材料についての明確な記述はなく、A-A-55301に準拠とのみ書かれています。
じゃあナイロン製なのかというとそうでもなく、A-A-55301ではnyron (or similar)となっており確実にナイロンでなければならないわけでもなさそうなのが悩みどころ。
海外のファブリック問屋でもMurdock製と銘打ってあるものでさえNylonとPolyesterが混在しており、結局どっちなんだよ状態。一方、日本国内の問屋は一貫してポリエステル説を採用しており、日本人としてはKaitaiyaさんのおっしゃる様にポリエステル説を信じたいところです。
まあ、Murdockに直接問いあわせろよって話なんですが(笑)
MultiCam fabrics in MysteryRanch products
あまり軽率にMultiCamを連呼するとMultiCam警察に逮捕されてしまいそうなのですが、今回はウェビングがテーマなので許してもらいましょう(笑)
シニアランチャーのみなさんであればご存知でしょうが、10年ほど前までMysteryRanchのCoyoteとMultiCamにつくストラップとバックルの色はTanカラーでした。お持ちのパックが写真左のHi-Diceのような色の組み合わせだった場合はほぼ間違いなく2010年より前のモデルです。
以下のリンクでも2009年当時のラインナップを見ることができます。
Mystery Ranch 3 Day Assault Pack ミステリーランチ 3デイアサルトパック | UTILITY Outdoor Select Shop
その翌年、Coyoteモデルのストラップの色がより深いCoyote色へと仕様変更された際に、おそらくMulticamのストラップも写真中央のWolf-Houndの様にプリントタイプのウェビングに変更されたものと思われます。
↓こちらは2012年の記事ですが、このころの3DAP CoyoteはTanカラーのバックルにCoyote色のウェビングでした。
↓こちらでは2011年製の3DAP MultiCamについて取り上げており、プリントタイプのウェビングになっていることがわかります。
webbingbabel: Mystery Ranch 3 Day Assault Pack Multicam
また、同じ頃にはオーストラリア軍に3DAPが採用されたということが話題になっていました。
写真を見ると、このオーストラリア向け3DAPではすでにプリントタイプとジャガート織タイプのウェビングが混在していたことがわかります。
Murdock Webbing Co.のジャガード織MultiCamウェビングが登場したのは2011年のこと。
Murdock Webbing Introduces MultiCam Jacquard Weave Webbing - Soldier Systems Daily
以下の記事は2012年のものですが、やはりジャガード織のウェビングについて言及しています。
REALMENT:REALMENT-Multicam-Tape
これらの資料からは、MysteryRanchは2010年頃にプリントタイプのウェビングを使い始めたものの、早くも2011年頃からは当時最新のMurdock製ジャガード織ウェビングを採用していたことがわかります。
そして、2013年頃にはバックルもブラウン色になり写真右のような配色となりました。
(ただ、製造年は不明ながら2014年頃まではTan色のバックルをつけたものが混在して出荷されていた様です。)
Durability of Jacquard Woven Webbing
さて、発表から現在に至るまでMysteryRanch製品に採用されているジャガード織タイプですが、その耐久性はどうなのでしょうか。
じつは、先ほどの写真にあった2013年製のOverload 3ZIPにヒントがありました。
このOverloadは製品化されなかった試作品と思われ、全体に使用感は少ないにも関わらずご覧の様に端が毛羽立っています。この他のストラップも同じようにダメージがありました。
2009年製のHi-Diceなどは、戦場でガシガシ使われたらしく綺麗な個体はなかなかお目にかかれません。それでもここまでウェビングにダメージを負っているものは見たことがありません。
Overloadシェルフで非常に鋭利なものを運んだ可能性はありますが、Kaitaiyaさんがおっしゃる様にジャガード織タイプはややスレに弱いということを念頭に置かなければならないようです。
What's next?
では、現在のカモラインナップはどうなっているのでしょう。
実は、MysteryRanchのハンティングラインでは(Kaitaiyaさんの見解と食い違ってしまうのですが)カモ柄のウェビングは採用されていません。価格を抑える為なのか、アメリカの輸出規制に引っかかるのかはわかりませんが、全て単色のウェビングに統一されています。
一方、ミリタリーラインはというと色々調べてみましたが今日に至るまでジャガード織タイプのウェビングが使用されている様です。
レビューなどを見る限り、最新のBlackJackパックでもジャガード織タイプが使用されているようですがバックルの種類が異なっている部分が気になります。
また、MultiCamモデルにはBlackJackとして販売する前のプロトタイプ(SpearPack)が存在しており、以下のShotShow2017の動画で確認できるほか一時中古品が出回ってもいました(あまりの汚さに手を出せませんでしたが、、)。
ということで、今回はMysteryRanchにおけるMultiCamウェビングの歴史を可能な限り紐解いてみましたが、なにぶんMultiCamをあまり持ったことがないもので間違っている部分も多々あるかと思います。なんせ全部妄想ですから。
ちげえよ!ってところがありましたらコメント欄にてお願いします(汗)
おまけ