MYSTERY RANCH Maniac

ミステリーランチの研究ブログ

3-ZIP プロトタイプ 2000年代初期?

年の瀬も迫り、16年度モデルが待ちきれない今日この頃いかがお過ごしでしょうか。

今回は久々に撮影の時間がとれましたので、私のMysteryRanchコレクションから奇妙なモデルをご紹介します。

 
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現在ではMysteryRanchのトレードマークとなっている"3-ZIPデザイン"ですが、2000年の創業当初から存在していた訳ではありません。
Danaへのインタビューによれば、3-ZIPデザインはスキー板をバックパックに固定した状態でパック内部にアクセスできる様なデザインを模索するなかで生まれたデザインであったとされています。それがいつ頃のことだったかについては語られていませんが、mysteryranch.comにSweetPeaなどの3-ZIPファミリーが登場したのが2004年の末であったことから2000~2003年にかけて開発が行われたものと思われます。現在もそうであるように、すぐにはWEBサイトに反映されず幾つかのプロトタイプが出回っていたのでしょう。今回紹介するモデルはそんなプロトタイプのうちのひとつだと考えられます。
ちなみに当時のmysteryranch.comではMonkeyシリーズやBDSBに代表されるOutamaticsシリーズが販売されており、SweetPeaなどはFuturaシリーズとして掲載されていました。
 
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このプロトタイプはもともとはアメリカのアウトドアショップにサンプルとして展示してあったもので、閉店に伴い処分されたとのこと。
とはいえ、パック表面にびっしり縫いつけられたPALSは現行のASAPやKomodoDragonなどを彷彿とさせ、アウトドアグッズというよりは軍用品という印象です。
 
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最も目を引くのはジッパーの中央部にある舌のような構造。
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さらにその舌の上をまたぐ形でストラップが伸びており、上蓋にバックル留めされています。この部分のバックルのみ珍しくITW製。
 
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バックルを外すとストラップは垂直なジッパーの引き手に繋がっています。
そして、ベロを持ち上げると左右のジッパーが、片方は垂直ジッパーの左右それぞれ、もう片方は上蓋のジッパーと噛み合うようにセットされているのが見えます。言葉で表すのは難しいですが、3方向からジッパーが閉まるかなり特殊な構造です。
 
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上蓋を解放したところ。
ベロを引っ張っても上手く開けることはできず、左右それぞれのジッパーを開けなければいけません。
また、垂直ジッパーのレールは上蓋のジッパーレールも兼ねているので、無理やり引き上げればある程度上まで閉まってしまいます。
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比較までに、現在の3-ZIPはこの様に垂直ジッパーと上蓋のジッパーは独立しています。
 
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ちなみに、このベロの様なパーツは上蓋の切れ込みに差し込んでベルクロ留めされているだけで簡単に外せます。
ベロにはベルクロのオス・メスが重ねて縫いつけてありました。恐らく製作段階で間違ったのでしょう。「っべ〜、オスメス間違えちった〜。ま、重ねて縫いつけちゃえ〜」って感じでしょうか。テキトーすぎます。
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ベロを失うとこんな感じになります。
この状態ではまさに「こんなん隙間から雨入りまくりですやん」状態。
 
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インテリアはシンプル。
左右と底材はX-PAC、背面はおなじみのPALSとハイドレーション用のポケットという組み合わせですが、SpadeLockはまだありません。
残念ながら加水分解が進んでおり、内面はベタついています。
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ハイドレーション用のポケットはあるのにホースの穴がない?と思ったら左右に開いてました。さすがにこの辺は抜かりなし。
 
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トップリッドにはシンプルなポケット付き。
現行品の様なメッシュの底面ではなく、外装と同じコーデュラ。
 
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ハーネスは黒く、外観は現行のものと大きく変わりません。
チェストストラップはMonkyシリーズなどにみられる取り外しの利かないもの。
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ヨークの後ろ側にロゴパッチが控えめに縫いつけられています。
フレームシートは現在も軍用以外でみられるプラスチック板に金属棒がT字に縫いつけられた方式。
 
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背面のパッドには現在とは違い、ゴムでコーティングされた様な滑りにくいメッシュが使われています。
製造時にはどうだったのかわかりませんが、経年によるのか全体にゴワゴワとした質感で、ややベタついています。
ヨークにもタグはなく、製造日は不明です。
 
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LiveWingウェストベルトが装備されており、造りは現在と変わりません。
この辺りは当初から完成形だった様です。
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ウェストベルトのバックル。NationalMolding製で、02のモールドから恐らく2002年製と考えられます。
 
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底面にもX-PACが用いられています。
また、初期のSweetPeaや3DAPのように左右にリングが装備されています。
 
 
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ASAPと比較すると、やや大きめですが3DAPよりは小さいかなという微妙な大きさです。
PALSの数でいえば横幅はKomodoDragonに近いですが、高さはASAPほどしかありません。
 
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今回のプロトタイプモデルは、バックルなどから2002年以降、恐らくは軍との契約が始まる2004年以前に軍への納入を見据えて製作されたものと思われます。ということは、スキーヤー向けに製作されたと言われる3-ZIPですが、そのデザインがまとまる前からミリタリーを意識して開発を進めていた、ということになります。
MysteryRanchのプロトタイプのなかでも、3-ZIPの構造自体が現在と異なるものはこのモデル以外に見たことがありません。しかし、Danaへのインタビューでは3-ZIPを試作した当初はこのモデルのように3つのジッパーを一箇所へ集めるものだったことが明かにされており、矛盾しません。
雨水に対応できない弱点があったとも認めていることから、この奇妙なベロのような構造はジッパーの隙間を塞ぐ為の試行錯誤の過程で生まれたものである可能性があります。
また、垂直ジッパーをわざわざバックル留めしているのは、垂直ジッパーが独立せず末広がりになっているために荷物でパックが左右に膨らむと自然に開いてきてしまう弱点があったからではないかと推測しています。現在の垂直ジッパーは最後までまっすぐに閉じるため、左右に引っ張っても開くことはありません。
 
こうした工夫にも関わらず、ごちゃごちゃした構造がかえって素早いアクセスを難しくしたため、お蔵入りになったのだと想像されます。
 
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普段何気なく使っている3-ZIPですが、そのデザインに秘められた偉大なデザイナーの知恵と試行錯誤の一端に触れることができる貴重な一品でした。
 
それでは皆様よいお年を。
 
 
MysteryRanch 3-ZIP Prototype : ☆☆☆☆☆
 
☆☆☆☆☆ 情報が乏しく、モデル名・使用用途が不詳な物。
☆☆☆☆ カタログに記載はないが、ネット上に情報のある物。
☆☆☆ 過去カタログに記載されていたが廃盤となった物。
☆☆ 現行品だが国内での入手が難しい物。
☆ 正規取扱店で入手が可能な物。
★ 別注・限定品。
 
 
 
 

【追記】新Wildernessシリーズについて

新しいハンティング用ラインナップであるWildernessシリーズについて見落としていた情報がありましたので、追記します。

 

Wildernessシリーズを構成するパックは以下の5つになるようです。ソースは前回と同じくAmmoLand.comから。

www.ammoland.com

 

 The Wilderness Series Lineup:

Marshall: The paragon, backcountry backpack
Metcalf: The king of hunting backpacks
Pintler: Streamlined, bowhunting backpack for overnight hunts
Cabinet: The day hunting pack that transforms
Scapegoat: An agile hunting daypack for carrying core gear

 

鑑だの王者だの洗練されただの、抽象的な説明が並びますがこれを見る限り前回のMarshall、MetcalfとScapegoatの3つの他にPintlerとCabinetというモデルが用意されていることが分かります。

さらに某所ではPintlerがLongbow、CabinetがCrewCabとそれぞれ同等品として紹介されていたことから新しいハンティングシリーズを立ち上げるにあたって製品の命名ルールを統一することにしたようです(ちなみにピントラーもキャビネットもモンタナ州にある山や麓の荒野の名前)。

現在のところ、この2つの製品が名称変更のみに止まるのかデザインにアップデートがあるのかは判りませんが、DragonSlayerはディスコンとなり、全く新しいデザインのScapegoatに役目が引き継がれるようです。

 

追記

 

Pintlerのものと思われる画像が某所に紹介されていました。

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画像を見る限り、現行Longbowとの違いはサイドポケットの追加などマイナーなものに止まるようです。

Cabinetについても画像を見つけ次第こちらで紹介したいと思います。

THE NEW METCALF PACK & SCAPEGOAT PACK

先日お伝えした2016年度のハンティング用モデルの詳細がこれまたAmmoland.comから紹介されています。

 

www.ammoland.com

www.ammoland.com

 

ひとつは超高機能ズタ袋ことMetcalfのマイナーアップデート版。もうひとつは前回の記事で言及した、シンガポールでの製品発表会の写真に写り込んでいた謎のモデルです。

 

記事によれば、この謎のモデルはScapegoat:スケープゴートという35Lクラスの製品で、現行のDragonslayerを補完するデイパックという位置付けのようです。スケープゴートというと生贄のことですが、俺は熊に喰われる生贄よ、という自虐的なネタではなくMetcalfと同様に地元モンタナ州西部にあるスケープゴート山や麓のスケープゴート荒野からきているものと思われます。

 

これで既に存在が判明しているTeraplane+Metcalfな長距離用のMarshallと、新設計のMetcalf、Scapegoatと新世代のハンティングラインが出そろった形となります。CrewcabやDragonslayer、Longbowなどの現行ラインも発表会のスライドで紹介されていることから引き続き供給されるものと思われます。(それぞれモデルチェンジされることが判明)

 

 これらの2016年度版ハンティングシリーズ(ワルダネスシリーズ)は特にアナウンス無しに段階的に出荷されているようで、幾つかのサイトで既に販売されているのが確認できます。

 

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某所で紹介されていたScapegoat。

この時点では情報が無かったため他社製品を誤って掲載しているのかと思っていました。以前バックカントリースキーヤー向けに開発されていたFUZE(SaddlePeakとは異なるデザインのもの)というモデルに似た馬蹄形の開口部が確認できます。

上記のショップではDragonslayerと混同していると思われる記述があり、注文してもどっちが届くのか分からないという有様でした(汗)。サイズ的にScapegoatと競合するため、もしかしたら近いうちにDragonslayerは廃盤になるのかもしれません。

 

ハンティングシリーズでは唯一Dragonslayerのみが日本で販売されていますが、Scapegoatはサイズからいっても今後日本で販売される可能性もゼロではなさそうです。

 

Guide Light Frame

Ammoland.comが、MysteryRanchの新しいハンティングスポーツ用軽量フレームシステムについて報じています。

記事によれば、2016年以降登場する新たなハンティング用パックシリーズ向けに開発されており、従来のNICEフレームに比べて軽量であることが特徴のようです。

記事中ではそのプロトタイプと思われるイラストも掲載されています。

既に報じられていたアウトドアスポーツ向けの2016年モデルも軽量化が特徴になっており、これまでの軍用路線からは徐々に離れ創業期に見られたようなスポーツ路線にシフトしていくようです。

 

www.ammoland.com

 

[追記]

以下、本文の簡単な訳です。注:内容の正確性については保証しません(汗)

 

モンタナ州ボーズマン発

機能や快適性、品質、耐久性に注目した数々の製品でパック業界を牽引するミステリーランチが、ハンター向けパックの新たな"Wildrness:ワルダネス"シリーズのための超軽量・高耐久性な基礎となる新”Guide Light Frame:ガイド・ライト・フレーム"を発売する。

 

2016年の"ワルダネス"シリーズを設計するにあたって、ミステリーランチはこれらの専門性の高い道具たちに10年来のパック製造技術と貨物運搬のノウハウを融合させた。採取のためにものすごい重量を背負わなければならない僻地での狩猟時、ハンター達は重量に打ち勝つためにもっと論理的な設計がなされた運搬用フレームとハーネス技術を必要としている。長い目で見れば、重さが考慮されないままでいれば疲労が早まり、ぶっ倒れてしまうからだ。

 

ミステリーランチの全社員は新しい、2016年にむけた同社初のハンティング専用フレームである”ガイド・ライト・フレーム”の発売に沸いている。

 

「ガイド・ライト・フレームは最新で革新的なソリューションと収穫作業を楽にする助けを探し求めるバックカントリーハンターや山岳ガイドのための我が社の新たなスタンダードとなるでしょう。」と、自身も公有地での狩猟許可を持つDIYハンターであるミステリーランチのマーケティング・マネージャ、Ryan Holmは語る。

 

ミステリーランチのR&Dチームが一年以上をかけたガイド・ライト・フレームは前モデルより軽く、より長身となり、革新的なロードベアリング・ソリューションでもってハンター固有の課題に取り組んでいる。加重によってより固くなるよう設計されているというこの新たな技術はハンター達のより軽快な獲物の追跡や、より安定した採集を可能にする。

 

ミステリーランチ製品にはいかなるコストダウンのためのB級素材の使用も、製造工程短縮のための端折りも見当たらない。それらのパックは高い品質をハンティングと道具双方に求めるスポーツマンのためのものなのだ。

 

主な特徴および仕様

・同じ力で二倍きつく固定できるリダイレクト・ウェストベルトはより人体の構造に適合しつつ、快適さを保ったまま背中からの荷重を保持する。

・適切な快適性のために完璧な荷重配置を実現するマウンテン・ヨークおよびヨーク・フレームシートによる、完全に調整可能なトルソー・アジャストメント機構。

・ウィング外側のウェストベルトと層状の腰部構造が3つのアタッチメントポイントを介して荷重の横移動を抑制し、安定させる。

・組み込み式のロードリフター・エクステンションが、長く重たいパックにより良い形態とより大きな機能的安定を与える。

 

ガイド・ライト・フレームは新しいミステリーランチのハンティングコレクションである、1964年にアメリカで制定された原始地域法で指定を受けたモンタナ州の自然保護地域にちなんで命名された"ワルダネス"シリーズの各製品に組み込まれる。もし諸君がハンターとしてより遠くにより多く運搬したいと考えるならーそしてそれを最小の荷重と労力で済ませたいならーガイド・ライト・フレームと新しい"ワルダネス”パックシリーズはまさに諸君の探し求めていたものだ。

 

ちなみにguide lightとは誘導灯のことですが、光のlightと軽さのlightを掛けたのでしょうか、、、。

注目なのは、これまでCrewCabやMetcalfなどのパック向けに提供されていたLift Kitが標準装備っぽいところでしょうか。軽量化されるのはいいとしても、あまり物が入っていない状態で頭の後ろに角がニョキッと生えてるのはビジュアル的に微妙かもしれません、、。

 

[追々記]

Mystery Ranch Singapoleが8月にFB上で公開していた2016年春モデルの説明会を撮影したアルバムにGuideLightFrameが出ていました。

従来のNICEフレームだと思って見逃していたようです。

リンク先では既存のMetcalfやMarthallの他に、何やら見慣れないパックが後ろにぶら下がってるのが見えます。迷彩模様のためディティールは分かりませんが、おそらくは前述の新Wildrnessシリーズのひとつと思われます。

www.facebook.com

Mystery Ranch 最新情報!

Outdoor Retailer Summer 2015のレポートにMysteryRanchのブースが紹介されています!

www.carryology.com

 

既に判明していたJAVA以外にも、CARINやSCREE(がれ場)と名付けられたアウトドア向け軽量モデルや女性用モデルが登場するようです!

小指でバッグの重さを競うことに何の意味がある?なんて強がっていたDanaですが、やはり時代の流れには逆らえずでしょうか。世界がやや平和になったということなのかもしれません。

記事ではそのほかにも既存モデルの(同社にしては)奇抜なカラーバリエーションのサンプルを見ることができます!